飲食店の人件費はどのくらい?目安と削減の方法を解説
- 【このコラムでわかること】
- 飲食店における人件費とは
- 飲食店の人件費を管理する際に重要な指標
- 飲食店での適切な人件費の目安
- 飲食店の人件費を削減するための対策
- 飲食店の人件費を削減する際に起こりうるリスク
飲食店を経営するうえで、人件費は無視できない存在の1つです。
利益を上げるためにも、人件費はなるべく抑えたいところですが、サービスの質やモチベーションにも関わる要素なので、慎重に判断する必要があります。
そこで今回は、飲食店における人件費の目安を、削減する方法とともに解説していきます。
どこまで人件費を削ってよいのかお悩みのオーナー様は、ぜひご一読ください。
飲食店における人件費とは
飲食店における人件費とは、雇っているスタッフに支払う、報酬や手当の総額を指します。
雇用形態によって内訳が異なるので、以下に表形式で詳細を整理しました。
【人件費の内訳比較の例】
雇用形態 | 正社員 | アルバイト・パート |
人件費の内訳 | 基本給
賞与 役職手当 残業手当 通勤手当 住宅手当 扶養手当 健康保険料 厚生年金 雇用保険料 組合費 |
基本給
時間外手当 深夜手当 交通費 |
基本的にアルバイト・パートの人件費は、働いた時間に対する給料や手当、交通費のみが該当します。
一方で、雇用条件次第で細かな違いはあるものの、正社員の人件費にはより多くの費目や手当が含まれています。
人件費について検討する際は、まずご自身のお店がどのような条件でスタッフを雇用していたか、再確認しておきましょう。
飲食店の人件費を管理する際に重要な指標
人件費を管理する際は、ただやみくもに数字の帳尻を合わせればよいというものではありません。
以下で解説する4つの重要な指標を把握し、適切に管理する必要があります。
人事売上高
人事売上高とは、スタッフが1時間あたりにどれだけの売上を出したのかを表す指標です。
「その日の売上高÷全スタッフの労働時間」で算出可能で、4,000~5,000円以上が1つの基準とされています。
スタッフの生産性が高くなるほど、人事売上高の値も高くなります。
しかし、あまりに高すぎる場合は、効率だけを優先した質の低いサービスをお客様に提供している可能性があるので、サービス内容の確認が必要です。
反対に、この値が低すぎるのであれば、スタッフが働いた時間に対して見合った売上を出せていないおそれがあります。
原因としては、忙しい時間帯ではないにもかかわらず、就業中のスタッフが多すぎるといったことが考えられるので、シフトや業務の調整状況を見直しましょう。
労働分配率
労働分配率は、売上高から原価を引いた値である粗利に対する人件費の割合で、「(人件費 ÷ 粗利)×100」で算出します。
たとえば、100万円の粗利から人件費として30万円支払ったとすると、労働分配率は30%です。
一般的に、飲食店における労働分配率の目安は40%前後とされています。
労働生産性
スタッフ1人あたりが生み出す利益の指標が、労働生産性です。
「粗利÷スタッフ数」で算出し、飲食店では50万~60万円程度が基準とされています。
ただし、単に上記の基準をクリアすればよいわけではなく、適正値を意識してお店を経営することが重要です。
なお、労働生産性に労働分配率をかけると、雇っているスタッフに支払う賃金の目安を求めることができます。
仮に労働生産性が60万円で、労働分配率が45%なら、スタッフ1人に対して「60万×0.45=27万円」を賃金として支給できます。
営業利益
売上から諸々の経費を引き、最終的に残った金額が営業利益となります。
飲食店の営業利益は、売上に対しておよそ5~8%が平均とされており、仮に月の売上が1,000万円であれば、営業利益は50万~80万円しか残りません。
人件費や原材料費にくわえて、店舗の家賃や毎月の水道光熱費など、飲食店の経営にはさまざまなコストが発生します。
そのため、営業利益を高めたいなら売上を伸ばすだけではなく、徹底したコスト管理も必要不可欠です。
家賃が高すぎないか、原材料費がかかりすぎていないかなど、改善できる点を探しましょう。
飲食店での適切な人件費の目安
4つの重要な指標をふまえたうえで、ここからは、飲食店での適切な人件費の目安を考えていきます。
利益率と食材費の目安
先ほど、売上に対する営業利益の割合は、5~8%ほどが平均であると説明しました。
これを実現するためには、売上に対する総コストの割合を、95%までに抑える必要があります。
この95%のうち、30%を食材費に、残りの65%を家賃や水道光熱費などの費用に充てると、ゆとりある経営が実現できると言われています。
FLコストの目安
FLコストとは、「Food(食材)」と「Labor(労働者)」、つまり食材費と人件費を合計した費用のことです。
一般的なレストランであれば、売上に対して55~60%ほどの割合を目指すのが望ましいです。
食材費を30%に抑えるのなら、人件費の適正範囲は25~30%程度であると判断できますね。
ただし、FLコストは、お店の形態やお客様の回転率によって、理想の比率が変動します。
たとえば焼肉店では、お客様に調理工程の一部を任せられるので、そのぶん人件費を抑さえて食材費を増やし、提供する料理の品質を上げたいところです。
反対に、スタッフによる接客をお店の売りにしたいのであれば、提供する品は食材費のあまりかからない料理やドリンクをメインにし、人件費の割合を増やす必要があります。
このように、25~30%というのはあくまでも目安として考え、実際のFLコストの値は、ご自身の経営するお店の業態に合わせて決めてください。
飲食店の人件費を削減するための対策
人件費を削減し、目安の値を達成するためには、どのような対策を講じればよいのでしょうか?
以下で5つの対策を解説しているので、ぜひお役立てください。
対策①アイドルタイムを把握してシフトを作成する
人件費を抑えるためには、お店の過去の売上に関するデータに基づいたシフト作成が欠かせません。
お店のアイドルタイム、すなわち忙しくない時間帯を把握して、その時間帯のシフトを最低限の人数に抑えれば、不要な人件費を削減できます。
反対に、給料日直後の金曜日や行楽シーズンなど、普段よりも売上が見込める日は多めの人数でシフトを組み、お店の営業を滞りなく進められるよう準備しておきましょう。
このように、繁忙のタイミングに合わせてシフトを作成すれば、効率よくスタッフに働いてもらうことができるうえ、労働生産性も適切な値に保つことができます。
対策②シフトを柔軟に変更する
飲食店では、大人数の宴会の予約がキャンセルされたり、悪天候の影響で普段忙しい時間帯でもお客様が来なかったりと、想定外の事象が発生するのは珍しくありません。
そのような場合は、スタッフに早上がりしてもらうか、当日のシフトから外れてもらうといったような、柔軟なシフト変更が求められます。
ただし、なかには「シフトが減って給料が下がるのは困る」と思っているスタッフもいます。
そのため、急遽シフトを変更せざるを得ない場合は必ずスタッフに相談して、問題ないという方のみシフトを調整してください。
対策③オペレーションを見直して生産性を高める
人件費を削減するためには、一度定められたフローやルールを見直して、オペレーションを改善していくのも重要です。
スタッフの人数や業務形態が変わると、最適なフローやルールも当然変わっていきます。
「どうすれば今のスタッフに効率よく働いてもらえるか?」を常に考えて、生産性の向上に努めれば、スタッフの数や賃金を変えずとも人件費の削減につながります。
対策④業務内容をまとめたマニュアルを作成する
新人スタッフには先輩スタッフが業務内容を教える必要がありますが、そこに割く時間があまりにも多いと、通常業務に影響が出てしまい、人件費が膨らみます。
そうした事態を防ぐためにも、業務内容はマニュアルにまとめて整理しておきましょう。
基本的な業務はマニュアルを見ながら対応してもらい、わからない箇所があればその都度先輩スタッフが教える体制をとれば、教育に必要な人件費を最小限に抑えられます。
また、マニュアルは業務の属人化の解消にも有効です。
属人化した業務があると、その業務を実施できるスタッフがいなくなった際のダメージが非常に大きく、リカバリーのためにさらに人件費がかかります。
マニュアルさえ整備できていれば、どんな業務でも誰かが対応できる状況を作れるため、急な欠員が発生しても心配ありません。
マニュアルの作成はイニシャルコストこそかかるものの、効率的な業務の遂行には必要不可欠なので、早い段階で準備することをおすすめします。
下記の記事で、接客マニュアルに記載する内容について解説しています。あわせて参考にしてください。
▶参考記事:飲食店の接客マニュアルに盛り込むべき6つの内容
対策⑤システムを導入して効率を上げる
スタッフの負担を少しでも軽くしたいのであれば、食券機や自動釣銭機などのシステムの導入が効果的です。
人手の必要な業務が減り、少ない人数でもお店を営業できるようになるので、人事売上高を高めることができます。
なお、会計作業を効率化したいなら、自動釣銭機の導入がおすすめです。
お客様の支払い料金を自動で計算して、お釣りまで出してくれるので、会計時間の大幅な短縮につながります。
また、計算間違いや釣り銭間違いといった会計時のミスを防げるため、トラブル対応に時間を割かずに済みます。
このように、釣り銭の補充やトラブル発生時の対応も容易なので、業務の効率を上げたいオーナー様はぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
飲食店の人件費を削減する際に起こりうるリスク
人件費の削減は、お店の利益を上げるために有効な手段であるとわかりました。
しかし、目先の利益にとらわれて、不用意に給料を引き下げたりスタッフを解雇したりすると、以下に紹介する3つのリスクが生じうるので注意が必要です。
リスク①スタッフのモチベーション低下
人件費を削減するために、同じ業務内容にもかかわらず給料だけが下がったり、親しいスタッフが解雇されたりすると、当然スタッフのモチベーションは低下します。
スタッフのモチベーションが下がれば、お店の雰囲気も悪くなり、業務の効率も悪くなってしまうかもしれません。
そうなると、結果的にお店の売上減少を招くことになるので、本末転倒です。
どうしても上記の対応をせざるを得ない状況であれば、経緯と必要性をスタッフにしっかりと説明して、納得してもらう必要があります。
また、売上目標を達成した際はボーナスを支給するといった施策を実践し、スタッフのモチベーションを維持していくことも重要です。
リスク②1人当たりの業務量の増加
スタッフの数が減れば、残ったスタッフ1人あたりの業務が増えます。
当然負担も大きくなるので、スタッフから出る不満も多くなるでしょう。
そうした不満が積み重なると、辞めていく方もそのうち出てくるようになり、さらに業務が大変になるという悪循環に陥ります。
そうなると、今までどおりの営業を続けられず、新しいスタッフを雇い、また教育のしなおしと、負担の増加は避けられません。
リスク③サービス水準の低下による顧客の減少
ここまでに解説したリスクは、結果としてお店のサービス水準の低下を招きます。
サービス水準の低下によって引き起こされる具体的な問題は、以下のとおりです。
【低品質なサービスの一例】
- 店内の雰囲気が悪く、落ち着かない
- お客様に対する接客態度が悪い
- 注文をとる、あるいは料理を提供するまでにかなり時間がかかる
- オーダー間違いや備品の破損など、ミスが多くなる
- 新人スタッフが教育されないまま従事している
こうした質の低いサービスが目立つようになれば、どれだけ提供する料理が素晴らしいものだとしても、お客様は離れてしまいます。
お客様にリピーターとして定着してもらいたいなら、料理の質はもちろん、サービスの質も高い水準を保つように心がけましょう。
自動釣銭機なら人件費の削減につながります
いかがでしたでしょうか。
人件費の削減は、お店の利益向上のために必要なことではありますが、不用意に切り詰めるとお店全体の品質低下を招いてしまいます。
各種指標やスタッフのモチベーション、FLコストのバランスなど、さまざまな要因をふまえて検討し、ご自身のお店に最適な人件費を設定しましょう。
会計業務向上のための自動釣銭機なら「Pay Cube」をご検討ください。スタッフの負担を軽減でき、結果として人件費の削減も見込めます。
内部に保留できる貨幣の量も非常に多いので補充作業もほとんどなく、ほかの業務に影響を与えません。ぜひお気軽にお問い合わせください。
PayCubeが気になった方へ